ぴーかん☀ノート

日々出合ったできごとで感じたことなどをつづります

精緻で深いインドの刺繍布 岩立フォークテキスタイルミュージアムの世界

NHK日曜美術館のアートシーンで紹介された“煌めく刺繍布フルカリ”を見て、これは行かなくては、と思いました。
もともと手芸は好きなので、刺繍の手法などは知っているつもりでいました.
でも、実際に数センチ先に実物の刺繍を見てしまうと、その精巧な刺し方に手法を超えた手仕事の厚みを感じてしまいます。
 
入館したとき、すでに学芸員の方が来館者に作品の説明を始めていました。
あまり広くないギャラリーに30名近い来館者がいて、テレビの影響とはいえその数の多さにびっくり。
独特の色の世界に紛れ込んでみました。
 

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“フルカリ”とはなに?

“フルカリ”という言葉も今回初めて知りました。
“フルカリ”とは、女性のかぶる“ベール”のことです。
 
インドとはいっても、独立以前のパンジャブ地方の農村で女性たちの手で刺繍を施された“ベール”のこと。1970年代ですでに実用としては使われていませんでした。
 
知らなければ“織物”とも見まがうような細かい刺繍なのに、素朴な印象を受けるのは、職業として制作されていたわけではないから?
自家用に綿から育てた綿糸を織るところから始める、気の遠くなるよう時間と作業を想像すると、目の前の擦り切れたステッチの糸端の部分にさえ愛着を感じます。
 
一見サテンステッチだと思われたステッチが“ダーニングステッチ”と呼ばれる技法で、それがかなり細かく埋め尽くされるように多用されていることが特徴的です。
 
 
これほど手のかかる美しいものをつくる理由は“婚礼”のためでもあるんですね。
 

“フルカリ”をつくるまで

フルカリは、綿を育てるところから始まります。
それを紡いで、織り機で織っていきます。
同じものを3枚織ってつなげ、1枚の大きな布として、その上に刺しゅうを施すのですね。
 
その時の刺し方がとても繊細なのです。
それは裏から見るとわかります。
裏にわたる糸を極限まで少なくしているため、表の華やかな埋め尽くしと対照的に、裏には点線のように糸がポツポツ並んでいます。
 
布の織り目のマス目を数えながら裏から刺しているようです。
スゴイ!
 

岩立フォークテキスタイルミュージアムとは?

岩立フォークテキスタイルミュージアムは、岩立広子さんがつくられたミュージアムです。岩立さんは美大出身で、染織家でもあります。
 
作家活動をして作品展を開いても、時間と収入の採算が合わないと感じたことから、手仕事の未来について考え始めたようです。
 
ニューヨークから始まった手仕事を巡る旅は、ペルー、ボリビア、メキシコ、グァテマラ、そしてインドへ。
プレインカの織物を何年もかけて再現してみたこともあったようです。
 
その中で分かったことは、手仕事は時間はすごくかかるけど、機械を通したりする縛りがないので、実はものすごく自由だということ。
 
岩立フォークテキスタイルミュージアムでは、岩立さんが長年、中南米やインドなどを何度も行き来して手に入れた染織品を目の前でじっくり見ることができます。
テーマに沿って、定期的に展示の入れ替えがあり、染織品の好きな人にはたまらない空間です。
 
最後に、ほぼ日イトイ新聞から、岩立さんの言葉を引用します。
 
このミュージアムでもいろんなものを
見てもらっていますけれど、
「ただ見るだけよね」って、
思うかたもいらっしゃるかもしれない。
 
だけど、ここから触発されて、何か、
見た人の仕事や生活に
プラスになることがあるんじゃないか。
 
「人間って、これだけのことができる」っていう、
そういう証のようなものとして、
いい時代の、ほんとにいい、活気にあふれたものを、
残しておきたいなっていう気持ちがあるんです。
 

 

 岩立フォークテキスタイルミュージアム